霧島連山の奥深くに炭化木があります。
炭化木は1716年に大爆発した新燃岳の名残です。その時の噴出物で森が埋まり、木々は蒸し焼きになりました。うまったまま炭になったのです。
時が流れ山の中は再び緑の木々が覆っていきましたが、その下では立木のまま炭になった炭化木が静かに眠っていました。雨が降り沢に水が流れると土が浸食されて、そのような炭化木が姿を現すことがあります。
竜王山の麓の沢では炭化木を見ることができます。炭化木は石炭ではありません。石化しておらず、炭そのものですから非常に脆いです。中には崩壊して沢の底に炭塊として転がっているものもあります。
脆くなっている炭化木は、壊すつもりはなくても触っただけれ崩れ落ちるかもしれません。炭化木を見つけたら、そっと見つめるだけにいたしましょう。くれぐれも壊したり、ましてや持ち帰ろうと思わないでください。持ち帰っても普通の炭と一緒ですから。
このあたりのルートは分かりにくいです。矢岳へのルートは比較的はっきりしていますが、竜王山の麓付近のルートははっきりしていません。踏み後も何通りもあったり、テープもとんでもない処にあったりします。訪れる時はご注意を。
途中に丸い井戸のような深い穴があったりします。もちろん、こんな山中に井戸があるわけはなく、これも炭化木の朽ちた後です。炭化木があった空間が、そのまま竪穴になっているのです。なかには大きなものもあり、うっかり落ちると上がれなくなるかもしれません。
それにしても、300年も前に大噴火って、どんなものだったんでしょうね。森を埋め尽くした火山灰の量も凄まじいものだったのでしょう。火砕流も起きたんでしょうね。きっと木々だけでなく動物たちの哀しみも一緒に埋まっていることでしょう。麓の人間達も無事だったのでしょうか。
そんな霧島のいにしえを思い起こさせる炭化木です。霧島の山深くで歴史の語り部として佇む炭化木、大切に見守っていきましょう。