神代山陵ご紹介の最後は吾平山陵です。
吾平山陵に祀られているのは鸕鷀草葺不合尊(うがやふきあわずのみこと)です。天孫降臨の瓊瓊杵尊の孫で、山幸彦の火火出見尊の子供になります。なによりも初代天皇である神武天皇の父にあたる神様です。
この神様には天孫降臨や山幸彦・山幸彦のような派手な物語はありません。天孫降臨や山幸彦・山幸彦の物語は、他の勢力との争いを表しているのかもしれません。鸕鷀草葺不合尊に、そのような物語が記されていないということは、この地で豊かに暮らし力を溜めて来たる東征に備えていたのかもしれません。静かな時代だったのかもしれませんね。
ウガヤフキアワズという名前は、生まれる際に立てていた産屋が間に合わずに生まれた神様という経緯にちなんだもだそうです。その産屋が鵜(う)の羽で葺(ふ)こうとされていたとか。鵜で葺くのが間に合わなかったということでしょうか。
母親は火火出見尊の后である豊玉姫です。出来上がっていない産気づいたときに中を見てはいけないと言ったのですが、それを火火出見尊が見てしまいます。すると豊玉姫が八尋和邇(やひろのわに)に姿を変えていたということです。覗き禁止物語は、鶴の恩返しなど色々と伝わっていますね。
例によって前置きがながくなりました。
吾平山陵は大隅半島の吾平町(あいらちょう)にあります。
吾平山陵は他の神代山陵とちがって山窟の中にあります。その窟の中には大小二つの塚があるそうですが、そこへ繋がる橋はもちろん通行禁止です。
吾平山陵は町の喧騒からはなれた静かな場所にあり、他に二つの山稜とは違った雰囲気を持っています。駐車場から川のほとりを玉砂利を踏みしめながらあるいていきます。三つほど橋をわたって10分ほど歩くと、鳥居のある岩肌が見えてきます。そこが吾平山陵です。
緑に包まれた参道と川のせせらぎは厳かで心を洗われる気がします。普段は人も少なく踏みしめる玉砂利の音が心地よく響きます。おすすめは春先です。桜の咲く頃には花びらが川面を埋めて綺麗です。近くには大隅広域公園があり、子供連れでも存分に楽しめます。
吾平山陵 アクセスマップ
鹿児島県鹿屋市吾平町上名5250-1